ジェフリー・ディーヴァー

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作品名出版社
死の教訓 上・下講談社文庫
コフィン・ダンサー文春文庫
ボーン・コレクター文春文庫
青い虚空文春文庫
悪魔の涙文春文庫
静寂の叫び 上・下文春文庫
監禁ハヤカワ文庫
眠れぬイヴのためにハヤカワ文庫
シャロウ・ブレイブスハヤカワ文庫
ヘルズ・キッチンハヤカワ文庫
ブラディ・リバー・ブルースハヤカワ文庫

【死の教訓 上・下】

半月の夜、湖畔で暴行され殺された、女子大生の死体が発見された。ニューレバノン保安官事務所 の捜査官ジム・コードは、現場から不審な新聞の切り抜きを発見した。コードの妻と息子、娘の セアラの写真に、脅しのメッセージが書かれていた。『ムーン・キラー』と犯人は呼ばれ、次の満月 に第2の殺人が起きる。

学習障害と診断されたセアラの治療には、かなりの費用がかかる。捜査にかかりきりのコードは、 妻と医師にまかせるしかなかった。新聞記者、保安官たち、州警察、殺された女子大学の経営難、 さまざまな人間たちの利害が絡み、事件は思わぬ方向へ動き出す。息子が逮捕されたのだ。

リンカーン・ライムシリーズより以前の作品のようです。ディーヴァーとは別人かと思うのは、 コードが切れ者ではないからでしょうか。人間の心の奥にある悪と、偶然が引き起こす事件という 描き方が、これはまた別な味があります。最後でのどんでん返しは、やはり活きています。娘の セアラに使う分量配分が多過ぎるのが、重い感じがしますが。


【コフィン・ダンサー】

コフィン・ダンサー(棺の前で踊る男)の入れ墨をした殺人鬼が、FBIの重要証人を殺した。 残る証人の命が狙われている。頸椎損傷で寝たきりのリンカーン・ライムに、捜査の依頼が来る。 微細な証拠物件から割り出す犯人像と、追い落とそうとするライムと相棒のサックス。

証人の一人・パーシーは夫のエドを事故で失い、チャーター機の会社を経営している。脅しに おびえては、仕事は進められない。決死の覚悟で、得意先から依頼された荷を運ぼうとする。 だが、ダンサーとライムとがお互いにかけた罠で、窮地に立たされてしまう。

精緻な構成力は魅力的で、ライムの分析力は、相変わらず舌を巻くすごさを見せてくれます。 シリーズ物になってしまったので、ラストがハッピーエンドになるのは、仕方がないのでしょうか。 映像化された前作がちらついて、物語のおもしろさはあるものの、多少の不満がのこりました。 際立ってうまいのは、爆発物を仕掛けられたパーシーの飛行機の操縦場面が、圧巻でした。 シリーズを続けて読むことになるとは思うけれど、あまり軽くなってほしくはありません。


【青い虚空】

初めての作家です。ハッカーものはこれまでにも読んできています が、これは上級クラスです。

護身術のHP主宰の女性が、殺害された。ビショップ刑事は、国防 総省に進入した疑いで刑務所に入っていた天才ハッカーのジレット に捜査への協力を求めた。
見返りに、ネットに接続する自由を与えられる。ネットで暗躍して いたのは、伝説のゲーマー・フェイトだった。警護が厳しく、もっ とも困難な標的の心臓にナイフを突き立てるゲーム・・・。

追いつめたと思うと、するりと逃げられる・・・。フェイトを追う 警察側にもある程度の知識のある人間を配置したことで、作品に深 みが出たと思います。フェイトやジレットの人間像も、共感さえ覚 えます。
これは、お勧めです。日本のハッカーものと比較しては悪いけど、 おもしろいですね。


【悪魔の涙】

地下鉄で、サイレンサーを使った大量の無差別殺人が起きる。市長宛 に2,000万ドルの要求の脅迫状が届く。「身代金を払わなければ4時 間おきに殺人を繰り返す」
指紋もいっさいない脅迫状から手がかりをつかもうと、FBIは筆跡鑑 定人パーカーに、依頼をする。小文字の「i」に特異な点を打ち、水滴 のような形をしていた。以前に同じような点をファイルし「悪魔の涙」 と名づけていた。

だが、捜査は進展せず身代金を受け取ろうとした犯人が、交通事故で 死亡する。指示されている殺人者を、どうしたら止められるのか・・・。

これもまたおもしろい作品で、引きつけられます。殺人計画がここま で計画的だとは。最後のひねりの、さらにもうひとつのひねりにやら れました。見抜けなくて、悔しいです。次作こそ、と、かき立てられます。


【シャロウ・ブレイブス】

映画のロケーションの場所をスカウトするため、ぺラムは相棒のマー ティーとのどかな田舎町クリアリーにやってきた。
マーティーが寄りかかっていた車が炎上し、トランクからドラッグが 発見される。殺されたことを確信するぺラムは、復讐しようとする。

だが、炎上した車は早くも処分され、現場も地ならしがされていた。 町のどこを歩いても誰かに監視されていた。さらにマーティーのド ラッグを理由に、ぺラムの仕事まで打ち切りになる。圧倒的な力に 阻まれる...。

映画の裏側を見ているような、不思議な感覚がありました。また、追 いつめられていくぺラムが、決してカッコよくはなく、ぼろぼろにさ れていくことについ引きつけられてしまいます。破綻のない、でも今 回はちょっと物足りなさを感じました。


【静寂の叫び 上・下】

ハンディを首謀とした脱獄囚3人が、ろう学校の生徒と教師を 人質に、廃食肉加工場に立てこもった。
警察とFBIの捜査官が取り囲む。FBI危機管理チームのポターは 携帯電話を投げ入れ、犯人たちとの交渉を始める。

氷のように冷静なハンディとポターの、長い心理対決が始まった。
中では教師のメラニーが生徒たちを助けようと、必死に動き出す。 ついに逃走用のヘリコプターと、人質の何人かを解放するという。

だが、そこには罠がしかけられている...。どこまでポターは読み取 ることができるだろうか。

ディーヴァーのいままでの作品の中でも、これは最高です。数十時 間にも及ぶ、犯人との人質解放交渉のやりとりが、最後まで手に汗を にぎらせるおもしろさがありました。大勢の捕らえる側の人間の心理 や、犯人たち、人質の少女たち。複雑な絡みをみごとに描ききってい ます。

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【監禁】

カウンセラー・ピーターズを名乗るアーロンは、巧妙な罠で少女ミー ガンに診療を受けさせた。
アーロンはミーガンの記憶から、離婚した両親へのこだわりを引きだし 書かせたものを、家出の置き手紙に見せかけた。ミーガンを神への生贄と するためだった。

警察も捜査に乗り出さない中、不審を持った元検事で弁護士の父テイトは、 離婚した妻ベットとともに行方を追う。恋人ジョシュアも加わるが、アー ロンの手に落ちてしまう。
裸のまま古い教会に監禁されたミーガンは、必死に脱出しようとしていた...。

またディーヴァーのおもしろさに、引き込まれて読んでしまいました。 いろんな場面におかれた一人一人の心理描写が、抜群です。こんなに ハマってしまうとは思いませんでした。うれしい、誤算ですね。

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【眠れぬイヴのために】

リズはバラ園を企業化するため妹のポーシャを家に呼んだ。驚異的な嵐が 近づく夜、夫のオーエンに忌まわしい記憶のルーベックが、精神病院を逃 走したという知らせが入る。
リズは、かつて殺人事件の証言に立ち、ルーベックの刑が確定していたのだ。 復讐だろうか。

巧妙な手口で、逃走したルーベックは薬の服用を数日前から止め、意識を 鮮明にさせていた。だが担当の医師コーラーも警察も、危害を加えること はないと、その保護に力を注ぐ。
ヒッチハイク、自転車、車と乗り継ぎ、銃も動物捕獲用罠も手にしたルー ベックは、リズに向かっていた...。

追うのは犬を連れた賞金稼ぎのヘック、医師コーラー、夫のオーエン。最後 には警察も動くのだが、ルーベックはたくみにかわしてしまう。
リズとポーシャは土嚢を積み上げ、嵐に備えながら二人の間のわだかまりを 話し合っていた。

嵐の夜というよく使われる舞台ですが、登場人物の心理が浮かび上がり 絡み合い、進展していくのがとにかくおもしろいのです。この作品もベスト 入りにしたいものでした。


【ヘルズ・キッチン】

なにが起きても不思議はない町・ヘルズ・キッチンで、ペラムはドキュ メンタリー映画の取材をしていた。
老婦人エティのアパートが、放火で全焼する。多額の保険がかけられて いたため、彼女に容疑がかかる。だが、ペラムは目の前で見ていたのだっ た。誰かにはめられたのだ・・・。

最後の最後まで、予想を裏切ってくれるのは今回も同じです。
おもしろい、という以外の言葉がほしいです。
次作の文庫化「ボーン・コレクター」が楽しみです。


【ボーン・コレクター】

現場鑑識の際、事故で四肢麻痺になりベッドに寝たきりのリンカーン・ライム は、ドクター・バーガーに安楽死を依頼する。
だがその寸前、ニューヨーク市警から殺人事件の科学捜査を頼まれてしまう。 敏腕ディーラーT・Jとジョンが国際空港からタクシーに乗った後、行方不明に なり、ジョンの死体が発見されたのだ。銃で撃たれ、生き埋めにされて。しかも 地上に突きだした指は肉をそがれ、女性の指輪をはめていた。

未詳の犯人を特定すべく、ライムは市警のセリットーや女性巡査サックスを 代わりに現場に向かわせる。残された微細な証拠から、犯人からのメッセージを 読みとろうとする。

だが、あざ笑うかのように次々に事件が発生していく。膨大な知識と知性で 犯人を追いつめていくライム。

2転3転する展開は、今回も最後まで強烈にこころをつかまれてしまいました。 捜査組織の力関係や、人間関係の複雑さも、ライムやサックスの心理も実に 細かく描かれていながら、無駄はひとつもないのがすごい、です。
この作品も、ぜひお勧めの1作です。


【ブラディ・リバー・ブルース】

映画ロケーション・スカウトのペラムは、マドックスで仕事仲間と飲むために 買ったビールを手にしていた。突然銃声が聞こえ、ビールが吹き飛んだ。逃げ 去る前のリンカーンの窓をペラムはのぞいた。それがすべての始まりだった。

撮影に次々に邪魔が入り、ペラムはリンカーンの中の人物を見たことの証言を 求められる。見ていないと言っても、嘘だと決めつけられ、警察やFBI、殺し 屋の双方から追われる立場になる・・・。

ペラムシリーズです。ペラムのキャラクターが、ほかの作品と比較するともう ひとつ魅力に欠ける気がします。おもしろさは、さすがにディーヴァーの持ち味 です。「ボーン・コレクター」が、強烈過ぎたかしら。

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