田中芳樹

【銀河英雄伝説(1)黎明篇】

太陽系第三惑星地球から、アルデバラン系第二惑星テオリアで、 繁栄を続ける人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟に別れて激しい 戦争を繰り返していた。帝国軍上級大将・ラインハルトは圧倒的 な軍事力で優勢にあったが、同盟軍用兵のヤン・ウェンリーの指 揮する軍が戦勝をくつがえしはじめた...。

ネット友人たちのお勧めで読みはじめた、この壮大な物語は10 巻まであります。人物像が描き分けられ、宇宙戦争物と、はじく には惜しいおもしろさがあります。自信に満ちたラインハルトと すぐにも退役したいと思いながら力を発揮するヤン・ウェンリー が、魅力的なせいでしょう。

【銀河英雄伝説(2)野望篇】

銀河帝国と、自由惑星同盟は一層激しい戦いを繰り広げていった。
帝国皇帝が急死、5歳の息子が新しい皇帝になり、ラインハルト は権力の座を得ようとする。無能な貴族たちを一掃しようと策略 を駆使するが、貴族軍との戦争になる。更に宿命の敵・同盟軍の ヤン・ウェンリーを追い落とすため同盟内部のクーデターを起こ させる画策を巡らす...。

強烈な印象を与えるのは、帝国の「アルテミスの首飾り」と呼ば れる12個の強固な軍事衛星が、ヤンの率いる同盟軍の意表をつ いた作戦で破壊される場面です。10億トンの氷塊を亜光速で 「アルテミス」に衝突させるというもの。壮大なスケールで迫って きました。

戦争物をあまり読まない、わたしにも想像さ せる硬質な文章は、みごとです。

【銀河英雄伝説(3)雌伏篇】

ヤンを引きずり下ろそうとするトリューニヒト一派 により、国防委員長の査問会にかけられるヤン。その不在をつい て帝国軍の攻撃を受ける。帝国軍が同盟軍に奪われたイゼルロー ン要塞を、奪回するために巨大要塞がワープしてくる...。

ひきこまれて読んでいるうちに。電車を乗り過ごしそうになりま した。これは、おもしろくなりました。そのまま引用になります が、作者の志の高さを感じました。

『人間の歴史に<絶対善と絶対悪の戦い>などなかった。あるの は、主観的な善と主観的な善との戦いであり、正義の信念と正義 の信念との相克である。一方的な侵略戦争の場合ですら、侵略す る側は自分こそ正義だと信じているものだ。戦争が絶えないのは それゆえである。人間が神と正義を信じているかぎり、争いはな くなるはずがない。』

【銀河英雄伝説(4)策謀篇】【銀河英雄伝説(5)風雲篇】

自由惑星同盟のフェザーン自治領主代理のボルテック弁務官は、 帝国のラインハルトに、ひそかに提案する。幼い帝国皇帝を連れ 出して亡命させ、亡命政権を樹立する。そうなれば自由惑星同盟 を討つ大義名分ができる。ただしフェザーン自治領だけは、安泰 の地位を確保してくれと。

ラインハルトはその策略を利用し、一気に権力の座に上り詰めよ うとした。フェザーンを占領したラインハルトは、要塞イゼルロ ーンにいるヤン・ウェンリーに全面攻撃をしかける。要塞を捨て 自在に応戦するヤンを、更に追い討ちをかける...。

ブラックホールを使ったり、華麗な(?)戦術で反撃するヤンの 姿と、絶対的な勝利を確信して突き進むラインハルトの、戦いは 想像力を刺激し、壮大なドラマを見せてくれます。ますますおも しろくなりました。

また引用になりますが、印象的な文章です。ヤンのこころの言葉。
『人間の精神のうちでもっとも貴重なものー権力と暴力に抗して 自由と開放を希求する精神がはぐくまれるには、強者からの抑圧 が不可欠の条件となるのだろうか。自由にとってよき環境は、自 由そのものを堕落させるだけなのだろうか』

【銀河英雄伝説(6)飛翔篇】【銀河英雄伝説(7)怒濤篇】

ついに、帝国にローエングラム王朝初代皇帝ラインハルトが誕生 した。新しい秩序を建設する事業が待っていた。
だが、首席秘書官ヒルダの従弟が、皇帝暗殺を企てた。それをきっ かけに、陰謀を企てるのではないかと見なされたヤン・ウェンリー への、帝国側のみならず自国政府からも監視が強められた。ヤン はその時、軍を退役しフレデリカと結婚し、あこがれの年金生活 を送っていたのだ。

帝国側のヤンの監視役レンネンカンプ大将が、同盟軍の不穏分子 に追いつめられ自害した事件を機に、皇帝ラインハルトは同盟領 ハイネセンへの出兵を決定した。一方でヤンは同盟への復帰の道 をたたれ、イゼルローン奪回を決意する...。再び戦いが始まる。

皇帝ラインハルトが側近にもらす言葉。
「予は呪われた生まれつきかも知れない。平和よりも戦いを好む のだ。流血によってしか人生を彩りえなくなっている」
側近は言う。「統一がなれば、自然に平和になります。それにお 飽きになったら、別の銀河系へいらっしゃればよろしいではあり ませんか」

う〜ん。ここまで人のこころが書けるなんて、すごいですね。

【銀河英雄伝説(8)乱離篇】【銀河英雄伝説(9)回天篇】【銀河英雄伝説(10)落日篇】

戦略的絶対優位にたつ、皇帝ラインハルトが率いる帝国軍は、た だひとりの敵・同盟軍ヤン・ウェンリーを討つことにより、宇宙 のすべてを治めることになるのだ。全軍を上げて、イゼルローン 要塞に向かった。ヤン同盟軍は善戦した。そのさなかラインハル トは、原因不明の発熱にやられていた。

帝国軍から会談の提示があり、会見に向かう予定だったヤンは、 思いもかけないテトリストに襲われてしまう。救援に向かうユリ アンたちが目にしたものは...。

思いがけないヤンの死!・・・
新司令官になったユリアンは多忙を極めていく。一方、帝国軍側 にも内戦が起きる。そしてついにユリアン率いるイゼルローン軍 と、皇帝ラインハルトが率いる帝国軍が真っ向からぶつかってい く...。

すさまじい結末でした。10巻にわたり、数えきれない戦争の場 面と、一人ひとりのこころの描写と、陰謀や憎悪が火を吹く様を、 描ききった田中さんに、脱帽です。どうやら、外伝も出版されて いるようですので、もう少ししたら読むことになるかも知れませ ん。10年以上前に書いたものだとは思えないすごい作品です。

【銀河英雄伝説(1〜5外伝)】

「銀河英雄伝説1〜10」の外伝です。
正統なストーリーには書かれなかった部分ということで、読みはじめたのですがこの物足りなさはなんでしょう。
若きラインハルト&ヤン&ユリアンと周辺の人物たちが登場します。年齢を下げた視点で書いたせいか、シンプル過ぎることと、既視感が強いのです。新しい発見というより、銀英伝をなつかしむために読むためのもののようです。
う〜ん。期待しすぎかしら。------後日談。外伝とは、ファンサービス作品という忠告が・・知らなかった・・・。であれば、文句なし。

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