高田崇史

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作品名出版社
QED 諏訪の神霊講談社ノベルス
毒草師幻冬舍
クリスマス緊急指令 きよしこの夜、事件は起こる!幻冬舍
QED〜flumen 九段坂の春講談社ノベルス
QED 河童伝説講談社ノベルス
QED〜ventus〜御霊将門講談社ノベルス
QED〜ventus〜鎌倉の闇講談社ノベルス
QED 神器封殺講談社ノベルス
QED~ventus~ 熊野の残照講談社ノベルス
QED 式の密室講談社文庫
「パズル自由自在 千葉千波の事件日記」講談社ノベルス
QED 鬼の城伝説講談社ノベルス
QED 龍馬暗殺講談社ノベルス
花に舞講談社ノベルス
月に酔講談社ノベルス
QED ベイカー街の問題講談社ノベルス
QED 東照宮の怨講談社ノベルス
QED 六歌仙の暗号講談社ノベルス
QED 竹取伝説講談社ノベルス
QED 百人一首の呪講談社文庫
試験に出ないパズル講談社ノベルス
試験に負けない密室講談社ノベルス
試験に出るパズル講談社ノベルス

「QED 諏訪の神霊」

御柱祭は、地面を引き摺られ、急坂から落とされ、川を潜らせて禊ぎをする。 その間多勢の人が 跨って乗っている御柱の下敷きになり、一人の男性が亡くなった。タタルと奈々たちは、 諏訪の 御柱祭の謎と殺人事件に挑んでいく。

シリーズが続き過ぎたせいか、あっと言わせる展開がなく、定式化してしまった感じがします。 論理的に語ろうとして、逆におもしろさが薄れたかも知れません。殺人事件の方が興味が 引かれますが、なんとなく不燃気味でした。そろそろ読者は読み疲れた感じがあります。


「クリスマス緊急指令 きよしこの夜、事件は起こる!」

「街のにぎわいと裏腹に、人が孤独に陥りがちなクリスマスには、信じられないような出来事が 訪れる」というキャッチの、6編の短編集です。「クリスマスプレゼントを貴女に---K's BAR STORY 」と「想い出は心の中で---K's BAR STORY」は、バーで語られる推理を交えたちょっと したいい話で、「オルゴールの恋唄」も甘さほろりの物語です。高田さんはこの手の話を、 シニカルに書いてみたかったのか、まさか本気じゃないですよね。タイトルに合わせて、無理矢理 出版した感じもします。


【QED〜flumen 九段坂の春】

千鳥ヶ淵の桜の下で、首の後ろをひと突きにされた男の死体が発見された。中学生の翔一が 発見者だった。その頃、同じ学校の桑原祟は、理科の教師・弥生と万葉集などの歌に隠された 話をしながら、やはり千鳥ヶ淵を歩いていた。だが、弥生が退職するという噂を知り、祟は ショックを受けていた。・・・「九段坂の春」 学校では、鎌倉宮で怪しい光が現れ、怨霊ではないかという噂が流れていた。棚旗奈々たちは、 寓の管理人が見回りの際死んだ理由を、推察していた。・・・「北鎌倉の夏」

ほかに「浅草寺の秋」「那智瀧の冬」4編の連作短編集です。「QED」シリーズの登場人物 たちの、中学生時代という読者の意表をつく設定が、新鮮です。いつもの強引な歴史の解読の 難解さは、分かりやすいものになりました。でも、各人がその頃から鋭い勘と視点を持ち、 さまざまな謎にを持って、事件を見つめていた辺りは納得です。


【毒草師】

医療雑誌の編集者・西田は、鬼田山家殺人事件を担当することになった。だが同僚の 朝美さんに資料を調べてもらうが、進まずに困っていた。最初の事件は20年前の当主が 離れに閉じこもり、消えた事件だった。息子の代になり、前妻の娘二人が消えた。そして今回、 後妻・久乃が同じく消えた事件。共通しているのは、密室から消えたことと、一つ目の鬼が 目撃されていることだった。代々伝わる呪いなのか。マンションの隣室に住む毒草師・御名形に 話すと、急展開で解決に向かった。

ずっと「QED」シリーズを読んできたので、高田さんらしい密室の謎と同時に、クールに 解き明かす毒草師が新鮮でした。「一つ目」には、どうしてもこだわりがあるのでしょうね。 謎解きのパターンがある意味ではオーソドックスなので、少しもの足りなさが残りました。 「伊勢物語」や和歌と関連づけ、毒草の知識の深さはさすがで、楽しませてくれます。


【QED 河童伝説】

河童伝説が残る川縁で、左手首を切断された死体が発見された。医薬会社のMRをしている兄が、 遺体を確認した。警察が犯人を逮捕できないうちに、今度はその兄も腕を切断され殺された。 一方、奈々と妹の沙織、ジャーナリストの小松崎は相馬野馬祭りを見ようと、出かけていた。 途中で崇(タタル)と合流し、河童伝説の深い意味を明らかにしながら、事件の謎に迫っていく。

これほどシリーズが続いていながら、構成が揺るがないというのも珍しい作家かも知れません。 河童とは何者なのか、なぜ相撲を取りたがるのか、なぜ川に引き込むのか。悲惨な歴史が また、現れた感じがします。また製薬会社と病院、医師たちとの関わり方も興味が引かれます。 シリーズを読み進むうち、自分の知識になってきたような錯覚に陥りますね。


【QED~ventus~御霊将門】

薬剤師の奈々は、妹の沙織が桜を見ようと誘った崇と一緒に、靖国神社を参拝した。 明治2年に創建された『詣墓』で、本殿には公務で戦死した祭神名簿が合祀され、民間人は 敷地内の別なところに祀されている。そこから日本三大悪党と言われる将門の、首と胴体を 祀っている筑土神社、そして神田明神へと足を運ぶ。続いて大手町の将門首塚、兜神社、 烏森神社、稲荷鬼王神社、鎧神社へと進むうち、将門の知られなかった面が見えてくる。

靖国神社の政治的な背景にまで踏み込んでみたり、解説もわかりやすくなった気がしました。 都内近郊の神社が、なんとなく身近に感じらるようです。もうひとつのストーリーの、薬剤師・ 神山礼子とMRの安岡の危うい展開が、ひたひたと緊迫していき、全体を引き締めていると 思います。ラストの1行は、そろそろ高田さんから離れようかと思っていたのを、「次も 読めよ」と釘を刺されたようでした。


【QED~ventus~鎌倉の闇】

奈々は妹の沙織とタタルと、実家近くの鎌倉を訪れる。沙織の出版社の特集記事を書くため だった。鎌倉五山の円覚寺からスタートし、知っているつもりだった鎌倉の意外な歴史を 知ることになる。途中で小松崎と合流した。小松崎は、密室とも言える部屋から消えた 「稲村モールド」社長失踪事件を追いかけていた。

二つのストーリが絡んで、いつもの強引な歴史推理は、こじつけとのすれすれの境界線で 展開されます。いつもより、軽いジャブという感じがするのは、短いせいでしょうか。


【QED 神器封殺】

学薬会の旅行で熊野に着いた奈々と崇たちは、一行から離れ、奈々の妹の沙織と刑事の小松崎と 合流することになった。熱田記念病院のオーナーが、マンション最上階で殺害されたのだった。 しかも首と右手を切断されていた。病院の経営に関わる人間関係が、次第に明らかになっていく。 一方、学薬会の禮子は友人で自称・毒草師と名乗る御名形史紋(みなかたしもん)と共に、奈々 たちと合流することになった。熊野の歴史に始まり、歴代天皇の三種の神器にまつわる謎解きが 繰り広げられた。

崇のほかに御名形というキャラが加わり、梵字に至るまで、一層深く歴史の謎を解き明かして いく展開は、一層磨きがかかってきたと思います。京都、伊勢、熱田、那智神宮へと及びます。 よく資料を集めていることに、感心させられます。そしていつもの強引な(?)説得力にも。 袋とじ本に仕上げているのも、おもしろいですね。


【QED~ventus~ 熊野の残照】

熊野への学薬旅行に参加した神山禮子(みわやまれいこ)は、奈々とタタルと一緒に行動する ことになる。熊野出身であることを隠している禮子は、タタルの博識に次第に引き込まれていく。 熊野三山には、深い意味が隠されていた。後白河上皇、後鳥羽上皇、鳥羽上皇が数多く参詣して いる謎。本宮大社、新宮、那智大社の並びの謎。伝承されている言葉の裏の謎。禮子の父との 葛藤も密やかに終結させながら、タタルの論理展開は歴史の紐をほどき、自由に推理していく。

高田さんはやっぱりすごいですね。巻頭に綴じ込んである地図も、凝っています。いつもの パターンでありながら、飽きさせず読ませ、否応なく納得させてしまうのは、力量なのですね。 禮子の過去も、歴史との絡みで救われるあたりが、後味の悪さを決して残さない高田さんなら ではでしょう。


【QED 式の密室】

薬学部の学生・桑原タタルは、文学部社会学科の弓削(ゆげ)和哉から、「安倍晴明」の時代 には『式』は実在したのではないかと言われる。同じ社会学科の小松崎も加わり、『式』と 弓削の祖父の密室殺人事件の検証がされる。弓削家は陰陽師の末裔だった。

事件の新たな解決とともに、「安倍晴明」伝説の、まったく別な解釈が繰り広げられます。 『人』の定義と、そこに共通する弓削家の殺人に関わる認識。この短さの中に、高田さんは みごとに展開して見せてくれます。QED=証明終わり。ほんとうに、うまくて説得力のある シリーズが楽しみです。


【パズル自由自在 千葉千波の事件日記】

千波くんと、ぴいくんとその妹チョコちゃんシリーズの短編6作です。この3人のキャラが、 毎回楽しませてくれます。殺人事件はなく、日常のできごとの謎を解いていきます。

『ゲーム・イン・ゲーム』は千波くんの離れでの事件。親戚の隆一郎くんと薫子ちゃんも 遊びにきていた。ジェンガに夢中になるうち、ビリヤードのボールが1個紛失する。ドアの鍵が 開き、誰かが侵入した形跡が・・・。

誰も悪人がいなくて、これだけおもしろいというのは、珍しいかも知れません。


【QED 鬼の城伝説】

薬剤師の奈々は「事件に首を突っ込むなよ」と薬局長に言われながら、妹と岡山の吉備神社に 旅行に出かけた。大和朝廷によって退治された、鬼神・温羅(うら)の首が土中深く埋められ、 いまも吉備神社の釜を鳴らすという。釜鳴りで吉兆を占う神事があった。

近く明日香が結婚する健爾の鬼野辺家には、もっと不吉な釜があるのが気がかりだった。その 釜が鳴ると、誰かが死ぬという。ある日、健爾に土蔵に呼ばれて行くと、鍵がかかっていて 中で首を落とした健爾の死体があった。

奈々たちがまた巻き込まれて行くミステリーは、大和朝廷にさかのぼり、桃太郎伝説までも 覆す大胆な推理が披露されます。高田さんの強引な説得力は、バックにある膨大な資料で裏付け されているので、さすがです。「タタル」が後半3/4あたりでようやく、奈々たちと合流して 鮮やかに解決してしまうパターンも、相変わらずおもしろいです。


【QED 龍馬暗殺】

薬剤師の奈々は出張で高知に行くことになり、坂本龍馬のファンである妹の沙織が ついて行きたいとわがままを言った。奈々の学生時代の友人・美鳥の案内で、学会 までの時間を、龍馬の銅像と記念館を見学した。

2日目は雨。美鳥の実家がある、わずか4世帯の蝶ヶ谷村を訪れた。そこへなぜか 桑原崇(タタル)が現れる。お遍路の話などをしているうちに、道路が土砂崩れで 不通になったと知らせが入る。そして、閉ざされた過疎の村で、次々に殺人事件が 起きていく。

縦糸としての、村の殺人事件。横糸として坂本龍馬暗殺の謎。ふたつが巧みに絡み 合い、最後まで引き付けていきます。激動の歴史的な事件に、深く踏み込んだ強引 な考察に、いつのまにか乗せられているのです。またしても、高田さんにやられた 感じです。


【花に舞】

勧修寺家の跡取り息子・文磨は、お酒に酔うと別人格になり、難事件を解決してしまう。

漫画のノベライズ化したものです。どうしても設定が甘くなるのですね。高校生シリー ズの方が、だんぜんおもしろい。と、あえて苦言をいいたいところです。
高田さんは、思いがけない大胆な論理の展開が味だと思っているので。


【月に酔】

2003.11.14

「花に舞」に続く、勧修寺家の跡取り息子・文磨の、お酒に酔うと別人格になり 難事件を解決してしまうシリーズです。

前作よりはいくらか充実してきたものの、軽すぎてこれもちょっとなーという感じが 拭えません。このシリーズはたぶん、もう読まないと思います。


【QED ベイカー街の問題】

シャーロック・ホームズは存在していたのか?研究クラブ「ベイカー・ストリート・ スモーカーズ」に招待された薬剤師の奈々と、先輩の桑原崇。
シャーロキアンたちの人間関係も、複雑だった。深い知識と造形を競い合うのだった。

パーティー会場で、メンバーが生け贄のような刺殺死体で発見される。内部の犯行か。

シャーロック・ホームズを読まないわたしにも、おもしろい題材でした。芝居が かったキャラが、いい動きをして楽しませてくれます。高田さんの力は、こういう 推理の展開で発揮するようです。手堅い作家です。


【QED 東照宮の怨】

三十六歌仙絵巻は、時代の中で分割されていた。所有者の一人・八重垣が 殺された。薬剤師の奈々は、先輩の桑原崇とジャーナリストの小松崎と共 に、事件に首を突っ込んでいく。

ダイイング・メッセージは「かごめ」。日光東照宮を中心にした謎に、崇 の新しい推測が始まり、みごとに繋がっていく。

「六歌仙」に続き、今回も緻密な資料分析を基にした、展開が楽しめまし た。強引とも思える仮説が、高田さんの独特の味だと思います。破綻がな いように見えるところが、さすがです。


【QED 六歌仙の暗号】

「百人一首の呪」で、歌に慣れたせいもあるのか、わかりやすくなった 気がします。

「七福神」に関する論文禁止の通達を破り、貴子は卒論のテーマにする。
以前、兄が調べて交通事故でなくなり、大学での連続怪死事件を引き起こ していた。貴子の周りで起きる新たな事件・・・。
貴子の友人で薬剤師の奈々は、先輩の桑原崇とジャーナリストの小松崎と 京都の寺を廻りながら、謎を解いていく。
七福神と六歌仙を、大胆に結びつけてしまう展開に感心してしまいます。 最後まで、桑原崇に引きずられそれがまた楽しいのです。これも、お勧め です。

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【QED 竹取伝説】

奥多摩の織部村には「魔のカーブ」があった。不審な事故が多発 していた。
薬剤師の奈々は、先輩の桑原崇とジャーナリストの小松崎良平と 3人で事件の謎を話し合っていた。事故死した青年が間際に言い 残した「カーブに竹が群生している場所があり、その竹が光った」 という言葉をめぐって。

70歳のドライブインのオーナーの女性が、20年前に同じ事故に 遭い、笹姫様の祟りだと言っていた。笹姫=かぐや姫?なのか。 竹取伝説とは、村に伝わる不吉な手まり歌とは...。
竹を巡り、高田崇史さんの大胆な論理の展開が、ほんとうにおも しろいです。一見すると、言葉遊びに思える話がするりと真実に たどりつくのを読むのは、やられたとまた悔しいのだが、楽しめ ます。


【QED 百人一首の呪】

百人一首カルタのコレクターで会社社長・真榊大陸の屋敷では、正月 のある日、1年に一度だけそろうしきたりに従い、家族全員が呼び集 められパーティーが開かれていた。
ほんのわずかな隙に真榊が殺され、手には1枚の札が握られていた。 ダイイング・メッセージなのか。

警察の事情聴取が始まり、集まったメンバー全員のアリバイがある。 刑事の小松崎の友人の桑原崇が、百人一首の謎に迫っていく...。

謎解きのもったいぶったところがない展開は、最初から手札を広げ どう推理するかを、読者に任せています。しかも読んでいるうちに、自 分で百人一首を理解したような気に、させてしまうのです。札をばらば らに分解し、再構築していくおもしろさと、思いがけない結末に引きこ まれていきます。

なかなかの強者です。シリーズを読んでみたいと思わせてくれます。

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【試験に出ないパズル】

高校生・千波と「ぴいくん」と呼ばれる僕と、警部補の父を持つ慎之介の 前作と同じ3人で、ひったくり犯人を追いかける。
江戸川を小舟で渡る犯人。追いかけるのは3人のほかに4人と犬が1匹。 二人づつを渡らせるのにどうするか。いくつか条件もある。犬と一緒は だめとか・・・。「山羊・海苔・私」

これも楽しめる短編です。パズルとしても、よくできています。軽い筆致 がいいですね。


【試験に負けない密室】

すらりと背の高い高校生・千波と同じ塾に通う、「ぴいくん」「八丁堀」と 呼ばれる僕と、警部補の父を持つ慎之介と3人は、千波の鷺次郎おじさんの別荘へ 招待された。
駅からタクシーに乗ると、行き先を聞き違えた運転手が、別な山奥で降ろしてし まった。雨で電車が崖崩れで止まり、電話も不通になる。宿泊するしかなかった。

「首切り塚」「神裁きの土牢」とかを見物しているうち、慎之介が足を滑らせて 土牢に閉じこめられてしまう。

今回の展開も、軽い中にきっちりと伏線が張りめぐらされ、最後まで楽しめます。 この3人のキャラもいいですね。


【試験に出るパズル】

すらりと背の高い高校生・千波と同じ塾に通う、「ぴいくん」「八丁堀」と 呼ばれる僕は、警部補の父を持つ慎之介と3人で、覚せい剤取り締まり事件の 謎を解こうとする。

5つの短編です。長編とはまた違う、おもしろさがあります。3人のキャラも 思考回路の違いを浮き上がらせ、ちょっとした謎やヒントから事件解決へと 進めてしまう鮮やかさは、みごとです。

「試験にでないパズル」も読みたくなります。こちらも、ハマってしまいまし た。

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