恩田陸の「ライオンハート」の発行が12月20日で、この「リセ
ット」が1月20日。偶然なのだけれど、こちらも時間を超えて巡
り会うストーリーなのです。もちろん状況設定は全然違うし、時間
を超える感じも違うけれど、こんなこともあるのですね。
北村薫の一番好きなところは、文章がきれいだというところ。なん
というか、美しい心や感性の持ち主だからこそ書ける。そして、今
回は戦時中の少女がとても、こまやかに描かれています。宝石のよ
うな味わい。そして、もう少しあとの少年。
死を目の前にした男性が過去を振り返る形で、不思議な出会いを語る。
北村薫が、わたしたちにどうしても語り伝えたかった、美しくも哀
しいメッセージ。ちゃんと受け止めたと、思いたい。
レナード・トンプスン『酔いどれ弁護士』、ロバート・アーサー、吉
行淳之介『あいびき』、深見豪、西條八十、などなど...。
初めて読む推理ものの初期の作品群を、北村薫さんが選び編集した
ものです。この頃のミステリーをほとんど読んでいなかったので、お
もしろかったです。作家自身が、仕掛けを楽しみながら書いていたの
ではないでしょうか。